仙腸関節障害(せんちょうかんせつしょうがい)について

I. 仙腸関節障害とはどのような病気ですか?

仙腸関節(せんちょうかんせつ)は、骨盤の骨である仙骨(せんこつ)と腸骨(ちょうこつ)の間にある関節であり、周囲の靭帯(じんたい)により強固に連結されています。仙腸関節(せんちょうかんせつ)は脊椎の根元に位置し、画像検査ではほとんど判らない程度の3~5mmのわずかな動きを有しています(図1)。日常生活の動きに対応できるよう、ビルの免震構造のように根元から脊椎のバランスをとっていると考えています。中腰での作業や不用意な動作、あるいは繰り返しの負荷で関節に微小な不適合が生じ、痛みが発生します。

仙腸関節障害は決して稀ではありません。一般的に、出産後の腰痛に仙腸関節障害が多いといわれますが、老若男女を問わず腰痛の原因となります(表)。

 

図1:仙腸関節の位置と動き                        表:仙腸関節障害の性別・年齢分布

 

II. どのような症状がありますか?

片側の腰臀部痛、下肢痛が多くみられます。

仙腸関節障害で訴えられる“腰痛”の部位は、仙腸関節を中心とした痛みが一般的ですが、臀部(でんぶ・おしり)、鼠径部(そけいぶ・あしの付け根)、下肢(かし・あし)などにも痛みを生じることがあります(図2)。

ぎっくり腰のような急性腰痛の一部は、仙腸関節の捻挫が原因と考えられます。仙腸関節の捻じれが解除されないまま続くと慢性腰痛の原因にもなります。長い時間椅子に座れない、仰向けに寝れない、痛いほうを下にして寝れない、という症状が特徴的で、歩行開始時に痛みがあるが徐々に楽になる、正坐は大丈夫という患者さんが多くいらっしゃいます。

腰臀部、下肢の症状は、腰椎の病気(腰部脊柱管狭窄症・ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう や 腰椎椎間板ヘルニア・ようついついかんばん など)による神経症状と似ているので注意が必要です。下肢の痛みは一般的に坐骨神経痛と呼ばれますが、仙腸関節の動きが悪くなり、周囲の靭帯が刺激されることでも、下肢の痛みを生じてきます。

また、腰椎と仙腸関節は近くにあり、関連していますので、腰椎の病気に合併することもあり得ます。腰椎の病気に対する手術後に残った症状の原因となる場合もあります。 

 

図2:仙腸関節障害の疼痛部位 100例の検討

 

III. 診断はどのようにするのですか?

 

仙腸関節障害の診断で特に重要なのは、患者さんの症状と触診です。痛みは表現しづらいものですが、ご自身のひとさし指で痛みの部位を示してもらうワンフィンガーテストが有用です(図4)。日常生活を思い浮かべ、普段特に痛みを感じる部位を指でなぞって表現して頂くと診断がつきやすくなります。そして、機能障害を起こしている仙腸関節を圧迫すると捻じれが増強し、痛みが強く出ますので診断の助けになります(図5)。また、骨盤の前の方を圧迫しても痛みが誘発されることがあります(図6)。仙腸関節はわずかな動きしかありませんので、レントゲン、CT、MRIなどの画像検査では、仙腸関節障害の診断は困難です。画像検査上、腰椎の病気(腰部脊柱管狭窄症・ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう や 腰椎椎間板ヘルニア・ようついついかんばん など)が認められても、症状と一致しない場合もありますので注意して診察をしています。

 

図4:ワンフィンガーテスト          図5:仙腸関節部の圧迫          図6:鼠径部(あしの付け根)の圧迫

 

IV. 治療はどのようにするのですか?

 安静、鎮痛剤(痛みどめ)、骨盤ゴムベルトといった保存的治療がまず行われます(図7)。骨盤ゴムベルトでは前締め、後締めを試し、疼痛が軽減される方を選択しますが、経過によって変わっていくこともあります。骨盤ゴムベルトは、仙腸関節の微小な不適合の発生を抑える効果があり、仕事復帰時などの再発予防にも使えます。これらの治療で改善しない場合には、仙腸関節ブロック(仙腸関節に局所麻酔剤を注射)を行います(図8)。ブロック注射によって痛みが軽減されることで、仙腸関節の適合が良くなり、回復に向かうと考えています。また、AKA(関節運動学的アプローチ)博田法(はかたほう)も有効で、徒手的に仙腸関節の適合を正していく方法です。非常に稀ですが、これらの治療を行っても強い症状のために日常生活に支障をきたす場合には、仙腸関節の微小な動きを止める手術(仙腸関節固定術)が行われます(図9)。

 

    図7:骨盤ゴムベルト           図8:仙腸関節ブロック                      図9:手術         

 

 

ご不明な点がございましたら、ご遠慮なく担当医にご相談ください。
監修:日本仙腸関節研究会