真実の腰痛治療を目指す、若き脊椎外科医を募集
仙腸関節抜きに腰痛治療は成り立たない!
当院では2010年に腰痛・仙腸関節センターを世界に先駆けて開設し、仙腸関節障害の診断とブロック治療、リハビリ、そして仙腸関節固定手術の開発を行ってきました。毎年開催される仙腸関節セミナーは16回を数え、全国各地から医師が参加しています。
今欧米で仙腸関節に注目
近年、欧米で新たな仙腸関節固定術が開発され、iFuse systemは数年で35,000例以上に施行され、RCTで成績がよいとの論文がでて、北米脊椎外科学会(NASS)の推奨手術にもなっています。また欧米に日本が加わり、2015年に国際仙腸関節手術会議(ICSJS)がドイツで開催されなど、仙腸関節の痛みに対する認識が世界に広がっています。その中でも、仙腸関節の痛みの診断とブロック療法においては日本が最も進んでいるとの実感を持っています。
仙腸関節の存在意義が明らかに!
これまで仙腸関節は動きが少なく、その存在意義、価値が不明であったために、学生の解剖実習でもなおざりにされてきた観があります。しかし、仙腸関節がなければ人間をやっていけないことが解ってきました。
仙腸関節は上体の支持と免震構造物のダンパーのような動きで地面からの衝撃を緩和しています。この関節がなかったら、骨折を起こす可能性が高いのです。
体幹と下肢の繋ぎ目が仙腸関節
≪ 腰椎より遥かに大きな力に曝される仙腸関節 ≫
『下肢は腸骨から』
脊椎動物の進化をみると、海生爬虫類で体幹と骨性の結合をしていない腹ビレが、四足動物に進化する過程で腸骨が体幹に結合して後肢になり、立ち上がって下肢になりました。股関節以下を下肢と思いがちですが、腸骨以下が下肢です。そのため、下肢を動かす主要な筋肉が腸骨を含む寛骨から生じています。体幹を移動させるために四肢が進化したのであり、基本的に下肢と体幹は分離して動くものです。それらの繋ぎ目である仙腸関節には常に体幹部の腰椎椎間板に比較にならない大きな剪断力が働いています。そこに関節の機能障害が起こると腰臀部痛を出します。
人類の宿命である腰痛の主役は仙腸関節
人類において腰痛は宿命と言われますが、二足歩行で腰椎部と比較にならない負荷に曝される仙腸関節から生じる腰痛こそ、人類の宿命とさえ言えます。
仙腸関節痛の診断ができると腰痛治療に極めて有利!
● 坐骨神経痛に類似した下肢痛を呈するため、不要な腰椎手術が避けられる!
● 腰椎疾患と仙腸関節の合併例が多く、術後に遺残した仙腸関節由来の疼痛に対処できる。
● 術後やリハビリ開始後に発生しやすい仙腸関節由来の痛みにも対処できる。
● 不要な腰椎再手術を防止できる。
● 術前に仙腸関節障害発生の可能性を説明しておくと患者も安心。治療に余裕がでる。
仙腸関節障害の頻度は腰痛患者の約25%と言われ、脊椎疾患との合併が39%との報告があり、少なくありません。脊椎の手術が成功しても、合併した仙腸関節の痛み、術後に出てきた痛みに対処できないために、苦しまれる患者さんが少なくないのが実情です。
当院では仙腸関節障害の診断と治療、リハビリ、最終的に関節固定術までを村上、黒澤大輔医師と理学療法士で協力しながら取り組んでいます。そして仙腸関節疾患の合併を吟味しながら内視鏡手術を含めて、脊椎疾患の手術を年間150例近く行っており、仙腸関節の固定術は年間10例程です。脊椎の手術は、毎週、東北医科薬科大学整形外科小澤浩司教授の指導下に行っています。
今年から、半年~1年の研修制度を新設しました。東北大学式の脊椎手術の技術習得と仙腸関節障害の診断と治療、そして脊椎疾患の合併例を、どのような手順で鑑別して、術式を決めるのか等の研修ができます。また筋膜リリースを得意とする名古屋の吉田眞一先生が隔月で診察応援に来られますので、この手技も学ぶことができます。
当院での研修で仙腸関節障害が少なくないことを実感でき、これに対処する力を養うことは今後、脊椎外科医として極めて有利になることは間違いありません。修了者には認定仙腸関節治療医師の称号を与える予定です。腰痛の真実に迫り、腰痛に苦しむ患者を救おうとの志を持つ、若手脊椎外科医師を大歓迎しますので、是非ご連絡下さい。
JCHO仙台病院 腰痛・仙腸関節センター センター長 村上 栄一
お問い合わせは JCHO仙台病院 整形外科腰痛・仙腸関節センター
または d-kurorin@m3.dion.ne.jp(黒澤大輔)へお願いいたします。
JCHO仙台病院 腰痛・仙腸関節センター 副センター長 黒澤 大輔
1.センター長である村上先生は、仙腸関節障害に関する英文教科書を出版した。仙腸関節に関する単著は世界初である。脊椎外科医が仙腸関節診療を行う際に重要なエッセンスを著者である村上先生から直接、指導を受けることができる。論文でも原著にあたることが重要であるのと同様、創始した医師に学ぶ意義は大きい。村上先生の蓄積してきた20年分の臨床経験、考え方を短期間で吸収し、若手医師は次の時代を開く新しいアイディアの基盤を早期に作ることができる。医師キャリアにおける30代でのスペシャリティ、40代でのオリジナリティの確立に向けた準備を始めることができ非常に有益な研修になることを約束する。
2.脊椎脊髄外科指導医である村上栄一先生、小澤浩司先生(東北医科薬科大学整形外科教授)の指導の下、東北大学の伝統的な脊椎外科手術の習得できる。
村上先生 小澤先生
近年、脊椎外科手術では新規のデバイスが次々と導入され、華やかな面がある一方で、原理原則を熟知せずに新しい手術を行うことのリスクが非常に大きい時代になっていることを知るべきである。最新の機器を使って完璧な手術をしたとしても、診断や方針が誤っていれば患者さんの期待に応えることはできない。手術の結果が悪くとも手術自体は完璧であったと患者さんに告げる医師もいるが、そのような手術は患者さんにとっては何の意味もなさないことを肝に銘じるべきである。我々は、患者さんが自分の家族であったらどのような脊椎手術をすべきなのかよく考えて、その方法で力を尽くすべきである。
東北大学脊椎グループのカンファレンスに参加し、脊椎診療の原理原則を習得することは、流行に流されない診療、キャリア形成に必ず役に立つ。
3.当院オリジナルの仙腸関節ブロック手技の習得し、仙腸関節障害を診断するスペシャリティを取得する。ブロック手技を徹底して習得すれば、若くして世界有数の仙腸関節診療の専門家になれる。手技を開発した医師について修練を積めば、手技の習得にそれほど時間はかからない。
仙腸関節後方靭帯ブロック(透視下) Murakami 2007
仙腸関節後方靭帯ブロック(エコー下)
仙腸関節腔内ブロック(裂隙中央アプローチ)
Kurosawa and Murakami 2017
4.当院では医師と理学療法士が協力して病態解明に挑んでいる。難治性の腰殿部症例について双方の視点から議論することで、新たな病態理解を得られる。全国から集まる難治性の症例の中には、いま治せない未知の病態も含まれており時に苦悩することもあるが、医師と理学療法士が情熱を秘めて追及すれば必ず解決策が見つかると信じて我々は診療をしている。逆にこれまで名だたる専門家が診て原因不明の病態は、解明すれば新発見につながるため、我々は学術的に最先端での試行錯誤をしているといえる。難治性の運動器疾患は心理社会的問題として分類されることもあるが、そうすべきではない、本当に困っている症例がたくさんいることを知ってほしい。若手医師の方は我々とともに次の時代を開く情熱を持って、このような難治症例に対峙してほしいと考えている。
理学療法士も一緒に回診し、ともに病態を考える。
仙腸関節周囲靭帯付着部症に対する体外衝撃治療の効果について、共同で学会発表を行った。
我々の世界初の試みが注目された。
5.運動器疾患に対する最新の診療環境がある。特に高解像度エコー(コニカミノルタ)を用いたエコー下ブロック手技の習得は、運動器エコー診療のスペシャリストである吉田眞一先生に直接学ぶことができる。吉田眞一先生による系統的な講義もあるため非常に有益である。
(写真右)吉田眞一先生
6.当院はペインクリニック科を有し、強固な協力体制で慢性疼痛診療を行っている。
研修者は特に、慢性難治性疼痛に対する高周波熱凝固術の臨床や、ペインクリニック医師からの適切な鎮痛薬使用法、整形外科医にとって学ぶ機会の少ない各種専門的なブロック手技(星状神経節節ブロック、腕神経叢ブロックなど)の取得が可能である。整形外科とペインクリニックで共同して臨床を行い、研究成果を発表している。
7.海外の専門家とのネットワークを通じて、仙腸関節の病態解明、手術方法の開発を目指す。また、当院での臨床知見を世界に向けて積極的に発信していく。
Dr. Fuchs (国際仙腸関節学会会長)に当院での仙腸関節前方固定術を披露。
国際的にも当院の腰痛・仙腸関節センターは広く知られている。
仙腸関節に関する国際学会では、当院での研究結果をこれまで多数発表、講演してきた。本邦発の診療方法、手術方法が注目を集めている。研修者も国際学会に同行することで、世界中の専門家とネットワークを構築し、新たな共同研究、留学等の道を探ることができる。
また、当院には国分フェローとしてアジア各国の若手の先生方が仙腸関節を学ぶために来院する。多くのアジアの先生方は自国の医療に尽くそうと高い志を持って勉強にきている。英語でのDiscussionの訓練にもなるし、見失いがちな自らの志を思い出し奮起する良い機会であると私は考えている。
香港の若手脊椎外科医に仙腸関節障害の診断と治療を伝授。
8.国内外での仙腸関節に関する共同研究に参加し、学会発表、英論文執筆を通じてキャリア形成ができる。研修期間中、必ず1編の英語論文を執筆し、今後、海外で活躍するための足掛かりをつくることを目指す。我々はPublishを強力にサポートするつもりである。
以下、今取り組んでいる共同研究を列挙する。研修者は興味に応じてこれに参加できる。また、仙腸関節に関する新しい研究のアイディアがあれば、国際的なネットワークを通じて実現をサポートする。
お問い合わせは JCHO仙台病院 整形外科腰痛・仙腸関節センター
または d-kurorin@m3.dion.ne.jp(黒澤大輔)へお願いいたします。
日本仙腸関節研究会 事務局 〒981-3281 宮城県仙台市泉区柴山2-1-1
JCHO仙台病院 整形外科 腰痛・仙腸関節センター